以前『お納めください。袖の下。患者さんにいいことはあるのか。』という記事で医師の応召義務に関して考察すると予告していましたので今回はこのテーマで行こうと思います。
医師の応召義務は簡単にいうと医師はどんな時でも医師であれ。ということです。
どゆこと?ってなりますね。
通常の職種の場合、就業時間が終わればその業務からは解き放たれるわけですし、休日は自由ですよね。
でも医師は診療の求めがあったら診察を行わないといけない。断れば訴える。という風潮が世間にはあります。
これは医師法第十九条1項で『診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。』と記載されていることによります。
ただ、多くの法律でそうなので厄介なのですが、法律は具体的なことや解釈に関しては全く触れておらず、世論に任せるという状態です。
そのため法律を運営するにあたっては裁判所の判例や、政府などの公的機関のガイドラインなどが重要になってきます。
昭和30年の厚生省通達(この頃はまだ厚労省ではない)では、「医師の不在または病気等により、事実上不可能な場合」のみ診療しなくていいとなっており、それ以降これを引き継いでいたのです。
しかし最近世論が大きく動いているのです。
中国で腎移植を受けた患者さんが、日本での継続診療を受けようと紹介状を持って訪れた浜松医科大病院で治療を拒否されたことに対して応召義務違反だとして訴えていた裁判が東京高裁似て棄却されたのです。
この時東京高裁は、応召義務は
①治療の必要性
②他の医療機関による診療可能性
③診療を拒否した理由の正当性
を総合的に判断する必要があることを述べました。
緊急の診療を行う必要がある事情は存在せず、他の医療機関で診療を受ける事も可能で、移植ツーリズムを禁止するイスタンブール宣言に従い海外渡航移植ビジネスに加担する恐れがある患者の診療を控える事とした病院の申し合わせには正当な理由があると判断されました。
また昨年12月15日第6回医師の働き方改革の推進に関する検討会にて各都道府県知事にむけて発令された医政発 1225 第 4 号によると、
患者の緊急性(病状の深刻度)であるが、それに当たらない場合は
労使協定・労働契約の範囲を超えた診療をする必要はない、と記載されています。
すなわち
①適切な診療時間
②患者と医療機関、医師、歯科医師の信頼関係
が満たされない場合は診療を拒否する正当な理由となる、ということです。
今回の通達ではさらに具体的に書いてあるので、興味のある方は一度読んでみていただきたいのですが、
医師も人間、労働者ですよ。
ということが書いてあります。
いろいろ書きましたが、時代の流れには確かに乗っているとは思うけど、どうかなーというのが私の本音です。
医師業というのはある意味神聖なものなのだと思います。
病は気からといいますが、私はその言葉の信者です。
病気は人を殺すことがありますが、必ずしも幸せは奪いません。
要は気の持ちようなのです。
病で苦しんでいる方や、亡くなる方が全て哀れでかわいそうなのではないと思います。
病める人に寄り添い、気持ちを楽にして、次の一歩を踏み出せるようにサポートするのが医師であると思っています。
その医師が『私はただの労働者だから』、『今は勤務外だから』と言って診療を拒否するのが当然になる世の中にはなって欲しくないのです。
うん。
医師が寄り添う気持ちを失ったら、AIには勝てません。AIはすでに医師の知識を遥かに凌駕しています。
そのうち診療能力(臨床推論)や薬剤投与による治療もAIの方がガイドラインに正確で多くの患者さんのメリットとなるでしょう。
最近はコロナウイルスによるソーシャルディスタンスのためにオンライン診療というものが認められ始めていますが、これもAIの方がいいのではないでしょうか。
そうすると失業する医師が増えてくるはずです。
まぁそれが世のためならその方がいいかもしれませんね。
コメント