頬骨弓骨折整復 gilliesアプローチ

医学

いつも読んでくださりありがとうございます。

頬骨骨折では頬骨tripod骨折と頬骨弓骨折が多く遭遇します。

今回は頬骨弓骨折の整復術について医療関係者でなくてもわかりやすく解説していこうと思います。

それではよろしくお願いします。

頬骨の解剖

頬骨の解剖について簡単に解説します。

頭の骨を全体前からみた状態ですが、頬骨というとどれになるのかわかりますでしょうか。

頬骨

頬骨は青くなっている部分の骨です。

普通の人が思う頬と作っている部分は頬骨と上顎骨と側頭骨です。

上顎骨
側頭骨

頬骨弓というのは頬骨と側頭骨のつなぎ目の部分のことです。

頬骨弓は咬筋や側頭筋膜などが付着しており、主に口を開いたり閉じたり、物を噛んだりするための軸の一部となっています。

また、頬骨弓の下を側頭筋が走行しており、骨折で干渉すると開口障害が出現します。

頬骨弓骨折で気をつけること

先ほども書きましたが、頬骨弓の下を側頭筋が走行しているため開口障害が出現する可能性があります。

基本的には緊急性はありませんが、顔面骨はいずれもそうですが、二週間程度で骨癒合して固まってしまい、整復が困難になることが多いので、外傷から一週間以内くらいには整復した方がいいでしょう。

手術適応

開口障害がある場合は行った方がいいです。

ただ、頬骨弓単独骨折の場合は基本的に整容面の問題が一番大きいため、性別や年齢、基礎疾患などを考慮した上で考える必要があります。

また、側頭筋が下を走行しているため、実際には整復しなくても物を噛んで側頭筋を使うことで頬骨弓が自然と整復されていくケースも多く、手術適応に関しては患者さんとしっかりと相談する必要があります。

術前にすること

レントゲンで頬骨弓軸位の撮影をする必要があります。

術後評価に用います。

また、エコーにてCTで比較しながら骨折部をマーキングします。

整復後もエコーを用いて同様の位置から見られるようにエコーの当てる位置もマーキングします。

手術方法

Gillies切開からのアプローチが一般的です。

浅側頭動脈の前頭枝よりも上からいくのが血管を処理する必要もなく楽です。

エコーや触診にて浅側頭動脈をマーキングします。

局所麻酔は頬骨弓部分と切開部分に行います。

E入りキシロカインを頬骨弓の骨折線から骨髄内に針を入れて髄内に打ち込むようなイメージで10ml以上入れます。

これを少ない量で行うと整復時に患者さんが激痛に耐えなければなりませんし、術者にとっても苦痛です。

こめかみの有毛部に2cm程度切開し、側頭筋膜を切開し側頭筋を同定します。

側頭筋膜は2枚あり、浅側頭筋膜の下にはすぐに深側頭筋膜があるのですが、皮切が低い位置だと途中に脂肪層があるため、それも超えなければなりません。

そのためできるだけ高い位置(U字鈎が届く部位を事前に確認します。)

ちなみに側頭筋膜はどちらも膜繊維なので筋体のような物はありませんし、腱もありません。

また側頭筋膜は薄い一枚の膜ではないので、浅い状態でU字鈎を入れてしまうと浅側頭筋膜と深側頭筋膜の間を剥離することになりどちらも停止が頬骨弓なので行き止まりになってしまいます。

しっかりと筋体と腱が見えるまで膜繊維を切開しましょう。

筋体が見えてきたら、U字鈎をそっと側頭筋に沿わせるようにやや下向きに挿入します。

この時正しいレイヤーであれば邪魔をする物はないのでほとんど抵抗なく、患者さんも痛みを訴えません。

この時に抵抗や患者さんの強い痛みの訴えなどあれば、レイヤーが違うのでもう一度膜の切開を見直しましょう。

頬骨弓の下にU字鈎が入ったら上から手で押さえながらU字鈎を引き上げます。

パキパキっと整復された感じがあるまで意外と力が必要です。

恐れずにやりましょう。

整復されたと思ったらエコーで確認して、足りない部分があれば追加で整復しましょう。

また、ぴったりと直すことが望ましいですが、オーバーになってしまうと患者さんの不満が出ることが多いので、ぴったりから少しアンダーで整復します。

整復できたら洗浄、止血をして、4−0PDSで深側頭筋膜、浅側頭筋膜の順に縫合します。

表層はステープラーで閉じて終了です。

術後

術後は3日以内に外来を受診してもらい頬骨弓軸位を再度撮影して術前と比較します。

術後2週間でこめかみ部分の抜鈎をします。

術後1ヶ月まで経過観察したら終診です。

ポイント

とにかく麻酔をいかにうまく打つかにかかっています。

基本的に日帰り手術でできますが、術後局所麻酔による顔面神経麻痺が一時的に出ることがあるますので、事前に説明しておくと良いでしょう。

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